フリーランスが法人化するときに知っておきたいメリットとデメリット 2020.05.26
フリーランスとして活動する人の中には、法人化をして会社を設立する人もいます。
フリーランスは自由な働き方として浸透していますが、法人化をするとその自由をある程度失うことになります。
しかし、法人化をすることでフリーランスのときには得られなかったメリットを享受できるのも事実です。
このページでは、フリーランスが法人化をするメリットやデメリット、法人化を検討するべきタイミングなどを徹底解説しています。
法人化を考えているフリーランスの人は必見の内容です!
フリーランスが法人化するメリット
ここからは、フリーランスが法人化するメリットを解説していきます。
- 社会的な信用を獲得できる
- 人材を確保しやすくなる
- 収入が多いほど税金を節約できる
- 給料や退職金を経費として計上できる
- 消費税を最大2年間支払わなくて良い
- 社会保険に加入できるようになる
- 決算期を自分で設定できる
- 事業を継続できる
フリーランスが法人化をする一番のメリットは、やはり法人ならではの安心感によるものや、税金関連のメリットが多いです。
自分好みに働き方をカスタマイズできることが法人化の良いところであるといえます。
法人化をすると、その瞬間から設立者であるあなたは社長になります。
フリーランスのときとは違って社会的な責任が大きくなることはちゃんと自覚するようにしましょう。
社会的な信用を獲得できる
個人のフリーランスとして働くよりも、法人であった方が、社会的な信用度は高いといえます。
金融機関の融資の審査に通りやすくなったり、取引先とのやりとりがスムーズになったりと、社会的な信用があるかどうかで仕事のやりやすさにも大きな違いが生まれます。
また、「社長」という肩書も思うがまま使うことができるようになるのです。
名刺を差し出すときの「社長」という肩書のステータス感はなかなかありません。
社長であるからこそ持つことができる人脈も増えるため、ビジネスにも大きな影響を及ぼす可能性があります。
フリーランスが法人化をするメリットとしては、まずフリーランス時代には得られないくらいの社会的信用を得られるというポイントにあります。
今後、事業を継続していきたいのであれば、フリーランスは法人化をすることをおすすめします。
人材を確保しやすくなる
フリーランスが法人化をすると、人材を確保しやすくなるというメリットも受けることができます。
特にシステム受託をおこなっている会社でエンジニアが必要な場合、法人化をしていた方がエンジニア(人材)を集めやすくなります。
優秀な人材を確保することができれば、そのぶん会社は事業や会社規模の拡大が見込めます。
会社経営の観点から判断すると、非常に大きなメリットとなります。
しかし、雇い入れた人材の人生は、社長であるあなたが背負わなくてはなりません。
会社として経営に失敗すると、自分だけでなく会社のメンバーやその家族まで路頭に迷うことになるのです。
法人化をして人材を集めるということは、大きなプレッシャーや社会的責任が付きまとうことをしっかり理解しておきましょう。
収入が多いほど税金を節約できる
フリーランスが法人化すると、収入が多ければ多いほど税金を節約できるというメリットがあります。
個人であるフリーランスとして働いていると、所得に比例して所得税を支払わなくてはならない、累進課税方式が適用されます。
所得税の税率は所得が多ければ多いほど大きくなります。
しかし、会社を設立して法人化すると、所得税の支払い義務はなくなり、代わりに法人税の支払いが義務化されます。
法人税は固定税率になるため、いくら所得を得ても税率が変わらないのです。
つまり、フリーランスが法人化して稼げば稼ぐほど、収入額から課税額や経費などを差し引いた課税所得が多くなるのです。
また、資本金が1億円以下のいわゆる中小法人であれば、法人税の課税率は15%に下げることができるという優遇措置も用意されています。
そのため、フリーランスが法人化をして、会社の規模が大きくなればなるほど、税金の負担は減るのです。
給料や退職金を経費として計上できる
フリーランスが法人化すると、給料や退職金を経費として計上することができます。
フリーランス、つまり個人事業主のままでいると、自分の報酬は経費として産出することができません。
法外に高い報酬や退職金はさすがに認められないものの、常識の範囲内であればこれらはすべて経費で落とすことができるのです。
給料が経費として計上できないフリーランスだと、仕事のために必要なお金と生活をするのに必要なお金が混ざってしまい、資金管理が面倒です。
しかし、法人化をして給料を経費として計上することで、お金を明確に分類しやすくなり、資金管理が圧倒的に楽になるのです。
給料や退職金を経費として計上できるのは、フリーランスが法人化をする大きなメリットであるといえます。
消費税を最大2年間支払わなくて良い
個人事業主であっても法人であっても、課税売上高が1000万円を超えると消費税を支払わなくてはならないという義務が発生します。
しかしフリーランスが法人化した場合、資本金が1000万円未満であれば、法人化してから年間は消費税の納税義務が免除されることがあります。
また、課税売上高が1000万円を超えているフリーランスも、フリーランスとして起業してから2年間は、消費税の支払いが免除される可能性があります。
そのため、フリーランスとして開業をしてから2年後に法人化すれば、さらに2年間消費税が免除されることになるのです。
つまり、法人化のタイミングをうまく見計らうことができれば、最大4年間消費税の納税義務が免除されるのです。
ただし、法人化した段階で、国税庁が定める特定の条件を満たしている場合は、消費税が免除されません。
消費税が免除されるこの2年という期間は、法人化するタイミングのひとつの目安として、頭に入れておくことをおすすめします。
社会保険に加入できるようになる
フリーランスが法人化をすると、社会保険に加入できるようになります。
個人事業主であるフリーランスでは、国民健康保険や国民年金しか加入することができません。
しかし、法人化をしてしまえば、自分はおろか社員も社会保険に加入できるようになるのです。
社会保険は国民年金よりも受け取れる年金の額が大きいため、金銭的なメリットを享受することができます。
また、社会保険を完備していると、求人を出した時に人気を集めます。
人材が集まりやすくなるということも、社会保険を完備する大きなメリットなのです。
元をたどれば、フリーランスが法人化をして社会保険に加入できるようになることで、人材面での規模拡大を見据えることができるのです。
決算期を自分で設定できる
フリーランスが法人化をすると、決算期を自分で設定することができるようになります。
個人事業主であるフリーランスの場合、決算期は12月です。
個人事業主は決算期を自分の都合で変更することはできないため、フリーランスの決算期は12月で固定です。
決算期に関わらず、確定申告や納税は3月の半ばまでに完了させなくてはならないため、多くのフリーランスがこの時期が一番忙しくなるでしょう。
しかし、法人であれば決算期を自由に設定することができます。
事業の繁忙期や納税の時期を避けることもできるため、完全に自分の事業の都合に決算期を合わせることができます。
納税などでなにかと入金が多い時期を避け、事業の閑散期に決算期を持ってくることもできるため、決算期という観点で見ると法人化は非常に魅力的であるといえます。
事業を継続できる
フリーランスが法人化をすると、続けていた事業を継続することができます。
フリーランスの場合、仕事はすべて個人でおこないます。
そのため、仮に事業が軌道に乗っていたとしても、自分が働けなくなったら事業を畳まなくてはなりません。
しかし、法人化をすると後継者を選ぶだけで、事業をおこなっている法人は残ります。
つまり、軌道に乗っている事業を継続できるのです。
一人で仕事をおこなうフリーランスでは絶対にできない事業の継承を、法人化をすることで実現できるのです。
事業を継続できるということは、フリーランスが法人化をする大きなメリットとなります。
将来的に事業を残していきたいフリーランスの人は、今のうちから法人化することを頭に入れておくことをおすすめします。
フリーランスが法人化するデメリット
ここからは、フリーランスが法人化するデメリットを解説していきます。
- 設立する際に費用が掛かる
- 会社を維持するための維持費が発生する
- 社会保険への加入が強制になる
- 給与が固定給になる
- 会計・税金の知識が必要不可欠になる
法人化するということは、会社を経営する必要があるということです。
フリーランスと時と比べて動きづらかったり、制約、守らなくてはならない義務が増えたりします。
フリーランスが法人化するデメリットはこのポイントにあります。
自由な働き方をしたいからフリーランスになったという人には、法人化はあまりおすすめできません。
ここからは、フリーランスが法人化をするデメリットをひとつずつ解説していきます。
設立する際に費用が掛かる
法人化をして会社を設立するとなると、設立の際に時間や費用が掛かります。
法人化をする場合、最初に法務局に設立登記申請をしなくてはなりません。
法人化をして株式会社を設立する場合は、登記代や印刷代を合算して24万円ほどかかります。
専門的な手続きも入ってくるため、中には司法書士や行政書士、税理士などに設立登記申請を代行してもらう場合もあります。
しかし、司法書士を雇うとなるとその分のお金も上乗せで支払わなくてはならないため、30万円は超えることを頭に入れておきましょう。
設立登記申請は会社経営をするために必要な知識のため、多少手間がかかっても自分でおこなうことで、会社経営の予習になります。
時間があるのであれば、できるだけ設立登記申請は自分でおこなうようにしましょう。
会社を維持するための維持費が発生する
法人は、たとえ収支が赤字であったとしても、決められた額の税金を支払わなくてはなりません。
また、法人化すると、税務まわりの書類が非常に多くなります。
税理士に依頼することになれば、その分の費用も別途発生します。
他にも、オフィスを構えるのであればオフィスの賃料なども毎月の負担になります。
会社を運営するためには必要不可欠な維持費が多くかかってくることは、フリーランスが法人化をするデメリットであると考えることができます。
社会保険への加入が強制になる
フリーランスが法人化をした場合、条件を満たす社員は全員社会保険に加入しなくてはなりません。
社会保険に加入することで将来的には安心することができますが、その分負担額も大きいです。
社会保険料の支払いを避けたくて未加入のままでいても、未加入であるということが判明した2年前までさかのぼって社会保険料を支払わなくてはなりません。
結果として支払う社会保険料は変わらないため、注意しておきましょう。
社会保険料は未来の自分への投資だと思い、お財布事情が厳しかったとしてもちゃんと支払うようにしましょう。
フリーランスが法人化をすると、社会保険への加入が強制になることをデメリットとして頭に入れておきましょう。
給与が固定給になる
フリーランスが法人化をすると、給与が固定給になるというデメリットもあります。
個人事業主であるフリーランスであれば、仕事をして稼いだお金はすべて自分の収入として考えることができました。
しかし、フリーランスが法人化をすると、会社のお金と自分のお金をきっぱり区別しないといけません。
会社役員の給与はあらかじめ決定する必要があり、その年度は自由に変更することができません。
そのため、ひたすら仕事をこなせば収入がアップするフリーランスとは違い、法人化をするとどれだけ働いても給与が変わらない固定給になるのです。
自分次第で収入アップが狙えることに魅力を感じてフリーランスになった人には、法人化することはあまりおすすめできません。
会計・税金の知識が必要不可欠になる
フリーランスが法人化をすると、複式簿記を用いた会計処理は必要不可欠になってきます。
設立した会社を安定して経営していくためにも、会計や税金に関する知識を身に着けておく必要があります。
特に知識を付けておきたいのは税金関連です。
会社として不要な税金を支払っていると、会社の損害になります。
そのため、不要な税金を支払わないために、税理士と相談しながら経営を進めていく必要があります。
しかし、この際に税理士に会計・税金関連の業務を丸投げすることは好ましくありません。
自分の会社のことであるため、ある程度は自分で知識をつけて業務をおこなうようにしましょう。
会計・税金の知識を身につけなくてはならないという点は、手間がかかるという観点から見て、フリーランスが法人化をするうえでのデメリットであると考えることができます。
フリーランスが法人化を考えるべきタイミング
フリーランスが法人化をするときには、タイミングも重要になってきます。
法人化をすると、相応のメリットやデメリットが発生します。
コストも少なからずかかるため、フリーランスが法人化をするタイミングは重要になってきます。
法人化をするにあたって好ましいタイミングは、事業が軌道に乗ったときです。
その指標が売上高と年間利益になります。
売上高か年間利益が延びてきたら、法人化をする頃合いであると考えて良いでしょう。
ここからは、それぞれの指標の基準を解説していきます。
売上高が1000万円を超えた時
フリーランスとしての売上高が1000万円を超えると、達成したその日から2年後から消費税を納税する義務が発生します。
しかし、法人化して会社を設立してしまえば、設立してから2年間は消費税の納税義務が免除されます。
個人事業主にとって、消費税に納税する金額は大きな負担になります。
そのため、消費増税までのモラトリアムを最大限に獲得できるタイミングで法人化することがおすすめなのです。
そしてその絶好のタイミングこそ、フリーランスとしての売上高が1000万円を超えたタイミングです。
売上高が1000万円を超えているフリーランスの人は、そろそろ法人化をすることを考えてみても良いでしょう。
年間利益が800万円を超えた時
年間利益が800万円を超えた時も、フリーランスが法人化を考えるべきタイミングです。
年間利益が安定して800万円以上になると、個人事業主であるフリーランスよりも法人のほうが税金負担を減らすことができるためです。
事業の規模や職種によっても税負担は変わってくるため、一概にはいえません。
しかし、どの職種であったとしても年間利益が800万円を超えると、フリーランスよりも法人のほうが、負担が安くなる可能性があるのです。
そのため、現在フリーランスとして働いている人は、年間利益が800万円を超えたタイミングで法人化を考えることをおすすめします。
フリーランスが法人化するための手順
ここからは、フリーランスが法人化するための手順を解説していきます。
- 設立手続きをする
- 設立登記の申請をおこなう
- 法人名義の口座を開設する
- 取引先に開業の案内を出す
- 会社設立から3カ月以内に役員報酬を設定する
- 諸官公庁に届け出をする
- 健康保険と年金の手続きをおこなう
フリーランスが法人化をするためには、さまざまな手続きを、段階を踏んで進めていかなくてはなりません。
中には設立してから数カ月以内に完了しなくてはならない事柄もあるため、法人化をするとなると最初は忙しくなります。
しかし、法人として会社を経営していくうえで知っておきたい知識も多くあるため、時間があるのであればできるだけ自分で手続きをおこなうことをおすすめします。
設立手続きをする
法人化して株式会社を設立する場合は、発起人を決定するとことから開始します。
社名や事業内容などを記した定款を作成し、出資金の振り込みなどをおこないます。
定款はしっかり作りこまないと突き返されてしまうため、最初から丁寧に作り込むようにしましょう。
設立登記の申請をおこなう
設立手続きが終了し、定款ができあがったら、本店所在地管轄の法務局で設立登記申請をおこないます。
この際に必要な主な書類は
- 設立登記申請書
- 定款
- 印鑑証明
- 資本金振り込みが証明できるもの
設立登記の申請をおこなう際には、
- 出資金の0.7%分の登録免許税
- 収入印紙代:4万円
- 定款認証手数料:約5万円
などがかかります。
法人化するためにはある程度のコストがかかることをあらかじめ頭に入れておきましょう。
法人名義の口座を開設する
法務局への設立登記申請を済ませたら、次は法人名義の口座を解説します。
法人名義の口座開設に必要な書類は、銀行によって異なります。
それぞれの銀行のWebサイトに、法人口座開設の案内が載せられています。
そのため、開設前にあらかじめ確認をしておくことで、スムーズに法人用口座の開設手続きを進めることができるでしょう。
また、最近では法人名義の口座を使った詐欺などの犯罪が増加しています。
その影響で、法人口座開設の審査が非常に厳しくなってきています。
状況によっては審査に時間を要する場合もあります。
そのため、法務局に登記事項証明書を発行してもらったら、できるだけはやいうちに口座を開設することをおすすめします。
取引先に開業の案内を出す
法人化した直後に新規のクライアントから仕事をもらえることは少なく、フリーランス時代に付き合いのあった取引先から仕事をもらうケースが多いです。
そのため、法人化して会社として開業をしたら、それまでお世話になっていた取引先に開業案内を出すようにしましょう。
開業の案内に記載する内容は
- 社名
- 屋号
- 開業日時
- オフィスの住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 事業内容
など、会社に関する基本的な情報です。
まずはフリーランス時代から付き合いのあった取引先から仕事をもらい、徐々に規模を大きくしていくことは主流です。
そのため、法人化をしたらまずはそれまでに付き合いのあった取引先やクライアントに開業の案内を出すことを忘れないようにしましょう。
会社設立から3カ月以内に役員報酬を設定する
法人化したら、会社設立から3カ月以内に役員の報酬を決定しなくてはなりません。
役員報酬は自分の給料に繋がります。
また、一度決めた役員報酬は向こう1年間自由に変更することができないため、慎重に設定するようにしましょう。
役員報酬は、ある程度売り上げが伸びることを見越して設定すると良いでしょう。
しかし、欲張って高く設定しすぎるのも考え物です。
自分の財布は潤うものの、会社の負担になってしまっては元も子もありません。
社会保険料の支払額にも直結するため、慎重に決めるに越したことはないのです。
諸官公庁に届け出をする
フリーランスから法人化し、会社を設立するにあたって、諸官公庁への届け出は必須です。
法人化するときは主に税務署と各自治体の税務事務所に出向かなくてはなりません。
手続きによって提出期限が違うため、できるだけ早く手続きを済ませておくことをお勧めします。
国税関係と地方税関係の手続きが終了すると、晴れて会社として認可され、会社設立を公に知らせることになります。
健康保険と年金の手続きをおこなう
従業員が一人以上の法人には、社会保険への加入が義務付けられています。
自分一人だけであったとしても、法人化したら社会保険に加入しなくてはなりません。
そのため、法人化して会社を設立したら、できるだけ早く年金事務所にて手続きをおこなうようにしましょう。
フリーランスと法人の違いはあなたが「社長」と名乗れるかどうか
フリーランスと法人の一番の違いは、「あなたが社長と名乗れるか」ということです。
社長という肩書には責任が付きまといます。
従業員とその家族の生活や、会社自体を守らなくてはなりません。
フリーランスのときは自分の心配だけをすればよかったのですが、法人化するとそうはいきません。
仕事をするにしても自分だけではなくなることが、フリーランスと法人の大きな違いです。
フリーランスから法人化をするのであれば、ある程度の覚悟も必要となるのです。
フリーランスは目先の利益だけを考えず、慎重に法人化を考えよう
フリーランスから法人化をすると、さまざまなメリットがあります。
しかし、同じようにデメリットがあることも事実です。
法人化をするタイミングや、何のために法人化をするのかなどで大きく変わってきます。
そのため、法人化を考えているフリーランスの人は、目先の利益だけでなく、長期的な目で見て法人化を検討するようにしましょう。
一度法人を設立してしまうと、簡単にフリーランスに戻ることはできません。
法人化は大きな決断になると、慎重に考えるようにしましょう。